職場に対する不満がつのってくると、転職して別の施設で働くことも考えたくなりますよね。不満を我慢しすぎると、心や体を壊してしまうかもしれません。
ただ、どんな職場でも不満というものは多かれ少なかれあるものです。
私自身は介護業界で転職を2回経験しました。以前は過酷な労働環境で働いていましたが、おかげさまで転職に成功し、今は自分らしくイキイキと働くことができています。振り返ってみると転職のタイミングが非常に良かったと思います。
では、転職すべきタイミングとはどのような状況なのでしょうか。
この記事では介護職員が転職すべきタイミングについて解説したいと思います。結論を言うと、次にあげる質問の答えが「Yes」なら転職のタイミングです。
- 満足感がまるでない?
- 社内に自分の未来はないと感じる?
- ワークライフバランスがとれていない?
- 有害な職場環境から抜け出せない?
- 努力が評価されていない?
- インフレが経済的なストレスになっている?
- 企業文化に違和感や不満がある?
- 上司や経営陣を信用できない?
介護職員として別の職場を選ぶべきか、今の職場にとどまるべきか、判断する材料のひとつにしてもらえたら嬉しいです。
それでは詳しく解説していきます。
満足感がまるでない?
どんな人でも、職場に対する多少の不満はあると思います。同時に満足している部分も少なからずあるものです。「少々の不満がある」程度では転職のタイミングとは言えません。
実際のところ介護職員は仕事の内容・やりがいに対して、どれくらい満足しているのでしょうか。以下の報告があります。
『不満足』と答えた人は2.8%となっています。「満足感がまるでない」と感じている人がいかに少ないか分かります。もしあなたが本当に「満足感がまるでない」と思っている場合は、転職のタイミングといえます。
社内に自分の未来はないと感じる?
介護は専門職であり、介護技術を高めていくことは非常に重要です。また介護はチームアプローチを求められる仕事でもあり、組織人として成長していくことも大切です。
成長や学び、新しいことへの挑戦がない状態では介護士としての専門性が失われ、もどかしい思いをするでしょう。
1年前と比べて能力が高まったと感じる介護士はどれくらいいるのでしょうか。以下の報告があります。
『変わらない』と回答している人が38.5%です。3分の1以上の人が成長を感じておらず、残念な結果といえるでしょう。もしあなたが能力の高まりを感じられる職場で働いているなら、それは幸せなことです。
スキルアップには自身の努力も大切ですが、環境によっても左右されます。事業所内で開かれる研修もその1つです。研修の実施状況について以下の調査結果をみてみましょう。
研修が開催されていない職場は11.1%となっています。このような職場はスキルアップしにくい環境といえるでしょう。
また上司などによる具体的な指導環境も重要です。以下の報告をみてみましょう。
上司などによる指導を『全くしてくれなかった』と回答した人は4.7%であり、圧倒的少数となっています。この環境ではスキルアップが難しく、転職のタイミングと言えるでしょう。
ワークライフバランスがとれていない?
仕事に精を出すことは良いことです。しかし仕事であまりに多くの時間とエネルギーを求められ、自分や家族のための時間がほとんどとれなくなると、燃え尽き症候群(バーンアウト)が心配されます。
ワークライフバランスはどのように考えればよいでしょうか。たとえば介護士の残業時間に関しては以下の調査結果があります。
施設介護職員で1週間のうち残業なしと答えた人が59.1%、5時間未満と答えた人が26%となっています。5時間以上と答えた人は合計して10%程度しかいません。最近は働き方改革の影響で業務が改善され、残業が少ない職場が増えています。
また介護士の有休取得日数については以下の報告があります。
有休取得日数が0日と答えた人が6.3%、1-4日と答えた人が17.7%となっており、合計すると24%となっています。
プライベートな時間を確保するためには、残業時間や有休取得日数が重要となってきます。これらのデータと自分の職場状況を比べ、今のワークライフバランスが適切かどうかの判断材料にしてください。
ワークライフバランスがとれていないと家族や友人との関係もぎくしゃくし、心や体の健康にも影響が出てきます。バランスがとれていないと感じたら転職のタイミングといえるでしょう。
有害な職場環境から抜け出せない?
有害な職場環境とは、一言でいえばパワハラ、セクハラなどのハラスメントがある環境です。「働いていて全くサポートがない」「過小評価されている」「いじめられている」などと感じると、メンタルヘルスにも深刻な影響を及ぼします。うつになってしまう可能性もあります。
職場内のハラスメントについて、実際の介護現場はどのような状況になっているでしょうか。以下の報告をみてみましょう。
最も多いものは「精神的な攻撃(脅迫など)」で8%の人が経験しています。次いで「人間関係からの切り離し(無視など)」を受けていると答えた人が4.5%います。上司に相談してもこのような有害な環境が改善されないなら、転職すべきタイミングです。
努力が評価されていない?
上司といえど人間ですので、自分の努力を完全に理解してくれるわけではありません。一生懸命がんばっているのに、上司から全然評価されないと感じることもあるでしょう。
まずは上司とよくコミュニケーションをとることが大切です。もし自分の評価が不当と感じるなら、まずは直接上司に相談してみましょう。
自分のしてきた仕事を説明し、成功例や効果をあげた事例を挙げ、期待以上の働きをしたことを上司に示しましょう。
上司が納得しないようなら、会社の期待に沿うためには何を改善し、どう行動を改めればよいか具体的なフィードバックを求めてもいいと思います。
このようなコミュニケーションがとれず、具体的な改善点も得られない状況では自分の評価は低いままです。転職を考えるタイミングとなるでしょう。
インフレが経済的なストレスになっている?
最近は物価の上昇が激しく、2023年1月の消費者物価指数(総合)は前年同月比で4.2%のプラスとなっています。これは1981年以来の伸び率となっています。
物価の値上がり(4.2%)に対応するためには、年収360万円の介護職員なら、15万円以上の昇給が必要です。月給にすると1万3千円程度の昇給です。これはなかなか厳しい数字です。
給料が上がらない、もしくは下がった、ボーナスが減ったなどで、経済的に苦しい状況になっている場合は転職を視野にいれた方がよいかもしれません。
ちなみに介護職員の平均給与はどれくらいなのでしょうか。資格や就労形態、手当などの状況によって変わりますが、一例として介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している事業所の平均給与額をみてみまよう。
令和3年度は月額で323190円となっており、前年度と比べて7780円の増加です。介護報酬の改定などで、介護職員の給料は今後もアップしていくことが予想されます。
企業文化に違和感や不満がある?
社風になじめなかったり、職場の価値観に賛同できないと、働き続けることは難しいでしょう。
しかしそのような状況でも、改善のために行動することはできます。新しいアイデアや取り組みを提案し、新規プロジェクトに名乗りをあげたり、会社の行事に参加してみたりしましょう。また同じ志を持つ同僚がいれば仲間になりましょう。このように新しい価値観を作るための行動を起こせば、少しは環境がましに思えてくるかもしれません。
しかし行動を起こしても何も変わらなければ、転職すべきタイミングだといえるでしょう。
上司や経営陣を信用できない?
介護職員の17.7%が『経営層や管理職などの管理能力が低い、業務の指示が不明確・不十分』と感じているという報告があります。
経営陣が下す決断を信頼したり尊重したりできない場合や、決定に透明性が欠けている場合は、転職して信頼できる職場を見つける必要があるかもしれません。
しかしその前に「なぜ上司や経営陣を信頼できないのか」よく考えてみてください。言動が原因なのか、それとも感覚的なものなのか。信頼できない理由を具体的に明らかにすれば上司や信頼できる同僚に相談ができます。相談により少しでも状況が改善される可能性が出てくるでしょう。
相談しても何も改善がされないようであれば転職のタイミングかもしれません。
私が1回目に転職した時の話:心身ともにボロボロ
これまで解説してきました『転職のタイミングを判断する8つの質問』を並べてみましょう。
- 満足感がまるでない?
- 社内に自分の未来はないと感じる?
- ワークライフバランスがとれていない?
- 有害な職場環境から抜け出せない?
- 努力が評価されていない?
- インフレが経済的なストレスになっている?
- 企業文化に違和感や不満がある?
- 上司や経営陣を信用できない?
ここで少し自分の話をしたいと思います。私がはじめて転職を考えたタイミングは「ワークライフバランスがとれていない」「努力が評価されていない」と感じた時でした。
当時の私は、人員不足のため週6日の労働をしていました。それを半年以上続けましたが体力的に非常に厳しいものがあり、心に余裕も持てない状況でした。
さらに当時の上司から「あなたには介護されたくない」と専門性を全否定されるような言葉をかけられました。もう、限界でした。
「自分は一生懸命がんばってきたつもりだったけど、まったく評価されないのだ。この職場にいても自分らしく働くことはできない。心身ともにボロボロになってしまう」と思い、転職を決意しました。
2回目に転職した時の話:社長のパワハラが横行
新しい職場にうつりましたが、そこの施設は「有害な職場環境」であり社長によるパワハラが横行していました。
精神的な攻撃が主で「なんでこんなこともできないのか」「このバカ」などと言われ、数時間におよぶ執拗な叱りを受けたりしました。あげくのはてには「仕事ができていないから給料を下げる」とまで言われました。
この職場に長くていてはいけないと思い、入社3か月で転職を決意しました。今回は転職エージェントにも相談し、迅速に対応して頂いた結果、転職は成功しました。
今はワークライフバランスのとれた環境で、自分らしくいきいきと介護の仕事ができています。あの時、思い切って転職して本当に良かったと思っています。
【まとめ】転職するべきタイミングを見極めよう!
介護職員が職場を変えるべきタイミングについて解説しました。みなさんは今回の質問に「はい」と答えましたか?「はい」と答えたのはどの質問でしたか?
すべてに満足できる職場環境はなかなかありませんが、転職すべきタイミングを吟味する時にこの記事を参考にしてもらえたら嬉しいです。
「今が転職すべきタイミングだ」と思った人には、介護専門の転職エージェントを使うことをおすすめします。理由はこちらの記事をご参照ください。
参考文献/URL
これらの問いの答えが「はい」なら転職のタイミング,Jack Kelly,Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン),2023
令和3年度 労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」,公益財団法人 介護労働安定センター,2022
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要,厚生労働省,2021
日本にインフレは到来するのか?,齋藤潤,公益社団法人 日本経済研究センター,2023