自分の施設がブラックかホワイトか判断することは難しいと思います。どんな職場にも良い面と悪い面があり、多少のことでブラックだと声を上げるのに抵抗のある人もいるでしょう。
ですが、労働条件が極端に悪い場合は注意が必要です。例えば給料が安すぎる、勤務時間が長すぎる、休憩がとれない、休暇がとれないといった職場では働くモチベーションが保てないでしょう。
私は18年間介護業界で働き今は管理職をしています。過去の職場では、ろくに休憩もとれず週6日勤務していたこともありました。現在は転職してホワイトな環境で働いています。
労働条件が極端に悪い職場は間違いなくブラックだと言えるでしょう。では介護職員の平均的な労働条件とはどれくらいなのか、この記事で解説したいと思います。結論は次のようになります。
- 【給料】年収363万円
- 【労働時間】8時間(一日あたり)
- 【休憩時間】58分
- 【休日】10日(ひと月あたり)
- 【昇給・出世】給料は増加傾向
あなたの職場の労働条件と比べてどうですか?この記事で解説する平均的な労働条件を確認して、自分の施設がブラックかどうか判断する際の参考にしてもらえたら嬉しいです。それでは詳しく解説します。
介護職員の平均的な給料:年収363万円
介護職員の平均的な給料は以下の表のとおりです。
平均年齢 | 44.2才 |
平均勤続年数 | 7.9年 |
平均月収 | 25.8万円 |
平均年間ボーナス額 | 53.9万円 |
平均年収 | 362.9万円 |
介護職員の平均月収と平均年間ボーナス額から計算される平均年収は362.9万円でした。
ただ資格の有無で給料は変わってきます。次の表を確認してみましょう。
保有資格 | 平均年収 |
---|---|
介護福祉士 | 397.3万円 |
実務者研修 | 362.9万円 |
介護職員初任者研修 | 360.3万円 |
保有資格なし | 322.4万円 |
介護福祉士の平均年収は397.3万円です。介護福祉士と無資格者では平均年収が70万円以上もひらきがあります。介護福祉士は介護系唯一の国家資格であり、資格手当や昇給の面で有利になるのは間違いありません。
介護職員の給料については以下の記事に詳細がありますのでよろしければ参考にしてください。
介護職員の平均的な労働時間:8時間
厚生労働省の就労条件総合調査によると医療・福祉分野における一日の所定労働時間は平均7時間50分となっています。
では介護職員の平均的な実労働時間はどれくらいでしょうか。介護職員の身体活動量を調査した研究によると日勤の介護職員の実労働時間は平均して493分(8時間13分)でした。
また賃金構造基本統計調査では介護職員の残業時間はひと月平均4時間となっています。
これらの結果から考えると一日の平均的な労働時間は8時間程度で、残業はほとんどないか、あっても1時間未満と考えられるでしょう。
介護職員の平均的な休憩時間:58分
労働基準法の第34条では休憩時間に関して以下のように定められています。
(第一項)労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(第三項)使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
労働基準法 | e-Gov法令検索
労働時間が8時間なら、休憩時間は1時間以上必要です。また休憩時間は自由に過ごせるものであり、利用者の見守りやコール対応などの業務がある場合は適切な休憩とは言えません。
では実際の介護職員の休憩時間はどのようになっているでしょうか。先述の身体活動量を調査した研究によると日勤の介護職員の実休憩時間は平均58分となっています。これは法令に近い妥当な時間といえるでしょう。
しかし、ある介護老人福祉施設の介護職員に対するアンケート調査では「実休憩なし」と答えた介護職員が6.2%にのぼりました。このように回答した介護職員は他の職員と比べて腰痛を訴える割合が有意に高かったそうです。一部の介護職員は十分な休憩がとれていないことが分かります。
ちなみに夜勤者の場合は2時間の仮眠をとることが勧められています。
夜勤が長時間におよぶ場合には、2時間の仮眠をとることが勧められます
介護者のための安全衛生マニュアル),独立行政法人労働安全衛生総合研究所,2013
介護職員の平均的な休日:月10日
厚生労働省の就労条件総合調査によると医療・福祉分野における年間休日数は平均109.4日となっています。また有休取得日数は平均10.7日となっており、合計すると平均して年間120.1日の休日があることになります。
ひと月にすると約10日の休日がもらえるということです。
介護職員の昇給・出世について
介護職員の給料は年々増加傾向です。理由としては処遇改善加算という制度の影響が大きいです。一例として「介護職員処遇改善加算Ⅰ」を取得すれば介護職員1人あたり月額3万7千円相当の賃金改善が可能とされています。この加算は令和6年度、さらに金額がアップする見込みとなっています。
また職場が出世しやすい環境なのか見渡しておくことも重要です。役職がつけば当然、手当など昇給が見込めます。反対に出世がしにくい職場では昇給はあまり期待できないでしょう。
介護職員はどこの施設も人手不足であり出世に有利な状況にあります。介護職員の出世に関しては以下の記事に詳細がありますのでよろしければ参考にしてください。
まとめ:労働条件が劣悪でないか確認しよう
この記事では介護職員の労働条件として平均的な給料、労働時間、休憩時間、休暇日数などを解説しました。平均と比べ極端に悪い労働条件で働かされている場合、そこはブラック施設だといえます。あなたの職場の実際の労働条件を確認しブラックかどうか判断する際の参考にしてもらえたら嬉しいです。
劣悪な条件下では仕事へのモチベーションが低下するだけでなく、心や体へのストレスで健康にまで被害がおよぶ可能性があります。
ブラック施設で長く働いてはいけません。みなさんが納得いく労働条件で、自分らしくイキイキと働けることを願っています。
劣悪な労働条件で働いているなら転職も考えて
あまりにも劣悪な労働条件で働いている場合、職場を変えることも検討してみてください。今、介護職員は引く手あまたであり、あなたに合う職場が見つかる可能性が高いです。転職を検討するなら介護専門の転職サイトを使うことをお勧めします(※完全無料です)。理由はこちらの記事をご参照ください。
参考文献
賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果,厚生労働省老健局老人保健課
大阪府内新設介護老人福祉施設における筋骨格系障害の実態-施設責任者の把握状況とアンケート調査による職員の訴え-,冨岡公子 他,産業衛生学雑誌,2007
_ユニットケアを導入している特別養護老人ホームに勤務する介護職員の身体活動量、エネルギー消費量および作業強度,涌井忠昭 他,産衛誌,2002
介護者のための安全衛生マニュアル),独立行政法人労働安全衛生総合研究所,2013