ハラスメント

【介護職場内のいじめ】見逃さない!いち早く発見して対処する方法

【PR】「ラブカイゴ」は複数の企業とアフィリエイトプログラムを提携しています。当記事は参考文献や筆者の経験などにもとづき執筆しており、情報の根拠を明示しています。

みなさんは、介護職場内でのいじめを見たり聞いたりしたことはありますか?もしくはあなた自身がいじめの被害者になっていないでしょうか?

いじめに出会ったとき、見て見ぬふりをするのは悪いことです。でも「これはいじめなのかな?」と判断に迷ったり、「どう対処したらいいんだろう」と悩むこともあるでしょう。

私は18年間介護業界で働き、今は管理職をしていますが、残念ながら過去に職場内でいじめが発生したことがありました。対処には時間がかかりましたが、今はいじめは無くなり、働きやすい職場を実現することができました。

職場内のいじめは決して許されるものではありあません。もし、いじめがあるとすれば早期発見し、適切に対処することが重要です。

この記事では職場内のいじめを早期発見する方法と、具体的な対策方法について解説します。結論は次の2点になります。

  1. いじめを早期発見するために、NAQ-R日本語版を活用する
  2. いじめの状況を記録し、自分の意思を相手に伝えたり、周囲に相談したりする

いじめの被害に遭っている人や、いじめを認識していてもどう対処すればよいか分からず悩んでいる人たちに参考にしてもらえたら嬉しいです。

いじめは繰り返されるもの

職場のいじめの定義は様々あります。Einarsenという学者は「いやがらせや、人を侮辱する、社会的に誰かを除外する、もしくは誰かの仕事に好ましくない影響を与える行為であり、繰り返し、定期的に(例えば週に1回など)起こり、一定の期間(例えば6か月間など)にわたって起こる」と定義しています。

他の定義を見ても、一定の期間にわたって繰り返されるという点に特徴があり、1度でも起これば認定されるハラスメントとは区別されます。

介護職員個人だけでなく職場全体にも悪影響

介護職員はチームで働きます。介護職場は複数の人間や職種が集まる場所です。その人間関係の中でいじめが起きてしまうと、悲惨な状況になることは言うまでもありません。

文献によれば、いじめにより被害に遭った介護職員は過度なストレスを受け、バーンアウト(燃え尽き症候群)になったり心身の不調を引き起こすリスクが高まります。米国の調査では、いじめを受けた労働者の半数近くが健康を害しているという報告があります。また、仕事に対するモチベーションやケアの質が低下し、長期欠勤や離職の原因ともなります。

いじめは個人だけではなく職場全体の問題です。いじめに遭っていなくても、見たり聞いたりするだけで職員はストレスを受けます。北欧の研究によれば、いじめを目撃した人は抑うつ症状になるリスクがなんと3倍にも増えるという報告があります。このように、いじめが行われると職場環境が悪化していきます。

では、いじめが起きている場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

早期発見のためにNAQ-R日本語版を活用しよう

まずは、いじめを早期発見することが重要です。しかし、いじめは見えにくい上に、加害者側の意図も千差万別で行われるため、実態がつかみにくい場合があります。

そこで職場のいじめを測定する尺度として開発されたNAQ-R(Negative Acts Questionnaire Revised)の日本語版を活用することをお勧めします。

以下の22の質問に、過去6か月間の間で受けた頻度を答えてみてください。

NAQ-R日本語版
1)あなたが仕事をする上で影響を及ぼすような情報を与えてもらえなかった1度も ない時々月に1回週に1回毎日
2)仕事に関することで恥をかかされた、あるいは、からかわれた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
3)あなたの能力・力量よりも低い仕事を与えられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
4)仕事で責任を負っていた部分から外された、あるいはよりつまらない仕事や不快な仕事に換えられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
5)あなたに関する陰口や噂を広められた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
6)あなたがいないかのように振る舞われた、のけものにされた、もしくは仲間外れにされた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
7)あなた自身のこと(習慣や生い立ち)やあなたの振る舞い、あるいは私生活についてばかにされたり、失礼なことを言われた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
8)怒鳴られた、あるいは、いきなり怒り(もしくは激怒)の矛先を向けられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
9)非難される、パーソナルスペース(個人の空間)に立ち入られる、押しのけられる、道をふさがれる、といったような威圧的な行為を受けた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
10)仕事を辞めるべきだとほのめかされた、もしくは態度で示された1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
11)あなたが起こした間違いや誤りを、繰り返し思い出させられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
12)あなたが近づいたとき、無視されたり、敵意を持った反応をされた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
13)あなたの仕事や努力に対して、何度も批判された1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
14)あなたの意見や考えが無視された1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
15)あなたとうまの合わない人から、悪質ないたずらをされた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
16)納得がいかない、もしくはやり遂げることが不可能な目標や締め切りを設定された仕事を与えられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
17)根拠なく非難された1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
18)必要以上に仕事を監視された1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
19)あなたに権利のあるもの(例えば疾病休業の申し出、休暇の取得、交通費の支給など)を主張できないよう、圧力をかけられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
20)度が過ぎた からかいや嫌味を言われる対象となった1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
21)手に負えないくらい沢山の仕事を与えられた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
22)暴力や、身体的な虐待を受ける恐れがあった。もしくは、実際に被害を受けた1度もない時々月に
1回
週に
1回
毎日
参考:労働者における職場のいじめの測定方法の開発とその実態、健康影響および関係要因に関する調査研究,川上憲人 他,産業医学振興財団,2009

該当する項目、頻度が多いほど、悪質ないじめが行われていると言えます。

介護職場内のいじめに対する4つの対策

いじめに気付いたら、一人で悩まずに次の4つの対策をしてください。

介護職場内のいじめに対する4つの対策
  1. いじめの状況を記録する
  2. はっきりと意思を伝える
  3. 職場の人・窓口に相談する
  4. 外部の相談窓口に相談する

これらはパワハラの対策と基本的に同じものです。以下のブログに対策の詳細がありますのでご参照ください。

許されない!【上司や先輩からのパワハラ】介護職員が自分の身を守る4つの対策 介護士はストレスの多い仕事と言われています。利用者の健康・生活のために、多少のストレスを抱えながら仕事に取り組んでいる人は多いでしょう...

まとめ:介護職場のいじめに対処する方法

介護職場のいじめに対処する方法を解説しました。まずはNAQ-R日本語版を活用していじめを早期発見してください。そして、いじめの状況を記録したり周囲に相談するなど適切な対策をしてください。

いじめは被害者個人だけの問題ではありません。職場全体に悪影響を及ぼします。見て見ぬふりはできません。勇気をふり絞って改善に向けた行動をとってください。対策を1つずつ行う中で、いじめがなくなり、健全な職場環境になることを願っています。

それでも介護職場のいじめが改善しない場合

4つの対策を行っても介護職場のいじめが改善しない場合、職場を変えることを視野に入れた方が良いでしょう。職場を変える(転職する)なら介護専門の転職サイトを使うことをお勧めします(※完全無料です)。理由はこちらの記事をご参照ください。

介護の転職エージェントとは?特徴や使い方、どんな人にオススメか解説します 『介護の転職エージェント』がどのようなものかご存じですか?広告などで見かけたことがあるかもしれませんが、くわしく理解している人は意外と...

どこにも誰にも相談することができない場合

いじめは非常に重大な問題です。職場内にいじめがあると、職員のストレスは計り知れず、辛く悲しい気持ちになるでしょう。そのような時は相談するという行為だけでも大変な苦労をします。もし、どこにも誰にも相談できないという方はラブカイゴまでお問い合わせ頂ければ幸いです。無料で相談、就労サポートさせて頂きます。

>>ラブカイゴお問い合わせフォーム

職場内のいじめに悩む介護職員が、一人でも少なくなることを心から願っています。

参考文献

介護老人福祉施設に勤務する介護職員のいじめ,ハラスメントとストレス反応,谷口敏代 他い,産業衛生学雑誌,2012

労働者における職場のいじめの測定方法の開発とその実態、健康影響および関係要因に関する調査研究,川上憲人 他,産業医学振興財団,2009