『逆セクハラ』という言葉をご存じですか?男性が女性から受けるセクハラのことを言います。女性職員が多い介護業界では意外と気づかれにくいかもしれません。
私も男性ですが、18年間、介護業界で働いてきた中で先輩や利用者からされたことが「これってセクハラじゃないか?」と思ったことが何度もあります。最初は戸惑いましたが、今は適切に対処できるようになりました。
この記事では男性介護士が受けるセクハラの具体例と3つの対処方法について解説します。「なんとなく嫌だけどこれってセクハラなのかな?」「どう対処していいか分からないから、我慢するしかない」と思っている男性介護士のみなさんに、参考にしてもらえたら嬉しいです。
逆セクハラとは、男性が受けるセクハラのこと
逆セクハラとは『男性が女性から受けるセクシャルハラスメント(セクハラ)』のことを意味します。一般的にセクハラは男性から女性に向けて行われることが多いため、逆に行われるセクハラという意味で使われています。
世の中には『セクハラは女性が受けるもの』という固定観念が浸透しており、男性が受けるセクハラは認知度が低い状況です。そのため被害者側も加害者側もセクハラとしての認識が無いまま行われているケースが多いです。
問題の根本的な原因の1つに『男性はこうあるべき』というイメージが社会に蔓延していることが挙げられます。当然ながら被害者が女性だろうと男性だろうと、セクハラはセクハラです。『逆』という言葉自体に違和感を感じる人もいるでしょう。
しかし、男性が受けるセクハラは事実認定される機会が少ないのも現実です。では男性が受けるセクハラとはどのようなものがあるのでしょうか?具体例を確認していきましょう。
男性介護士が受けるセクハラの具体例
セクハラ発言
答えたくないのに以下のような質問への答えを強要されるのはセクハラに当たると言えます。
- 彼女いないの?
- なんで結婚しないの?
- 一緒にデートに行かない?
- 私の胸元見てたでしょ?
上司や同僚、利用者やその家族から言われて嫌な思いをしたことはありませんか?特に自分の親よりも年上の世代など、年齢差が大きい場合は不快に感じるかもしれません。
男性差別
男性だからといって辛い仕事を強要されたり、差別的な発言をされることもセクハラに該当します。
- 「男なんだから」と力仕事を押し付けられる
- 「男なのにこんなこともできないの?」と嫌味を言われる
- 女性職員が集団になって、男性であることをからかってくる
特に女性職員が多い介護の職場では、男性差別が当然のように行われるケースがあります。
体を触られる
女性同様、親しくない人に体を触られることは男性も不快に感じます。過度なボディタッチはセクハラに当たります。
- 利用者に腕をつかまれる
- 利用者が抱き着いてくる
- 上司に体をなでられる
- 職場の飲み会の席でベタベタ体を触られる
必要以上に露出度の高い格好を見せつける
女性が胸元を大きくはだけさせるなど、必要以上に露出度の高い格好をしていると、男性は目のやり場に困ってしまいます。このような場合もセクハラに該当する可能性があります。
個人にも職場にも、百害あって一利なし
セクハラが継続されると男性介護士は過度なストレス受け、心身の不調を引き起こす可能性があります。仕事に対するモチベーションやケアの質が低下し、離職の原因ともなります。
セクハラは職員にとっても、職場にとっても百害あって一利なしです。当然、男性でもセクハラ被害から守られるべきなのです。男女雇用機会均等法において、事業主はセクハラ対策を義務付けられています。
「男ならこれくらい我慢しなければ」「男がセクハラの相談なんて恥ずかしい」などと思わずに次に挙げる対処法をとってください。
男性介護士が受けるセクハラに対処する3つの方法
1.はっきりと意思を伝える
セクハラによって「困っている」「不快に感じている」「止めてほしい」など、あなたの意思を相手に伝えましょう。はっきり「ノー」と言うことはとても勇気がいることですが、問題を解決するための一歩となります。
2.職場の窓口に相談する
一人だけで悩まず、上司や同僚に相談しましょう。セクハラは個人の問題ではなく、職場の問題です。職場の協力を得ることで、セクハラをしている本人が、自らの行為に気づいて改善される場合があります。事業所内で相談する人がいない場合は、施設長やハラスメントの相談窓口、人事部などに相談してみましょう。
3.外部の窓口に相談する
職場内で相談する窓口がない場合や、職場内で解決できない場合は外部の窓口に相談しましょう。下記の相談先はいずれも無料で相談できます。
まとめ:3つの対処方法で逆セクハラを防止しよう
男性介護士が受けるセクハラの具体例と、3つの対処方法について解説しました。男性も女性と同じようにセクハラから守られるべき立場にあります。我慢せずに適切に対処していきましょう。まずは相手に「やめてください」とはっきり伝えることが重要です。セクハラがなくなり、職場内の人間関係が良好になると良いですね。
それでもセクハラが解決しない場合
女性の介護職員が多く、男性の立場が弱い職場の場合は、男性差別的な考えが簡単には改善しない可能性があります。3つの対策を行ってもセクハラが改善しない場合、自分の身を守るためにも職場を変えることを視野に入れた方が良いかもしれません。職場を変える(転職する)なら介護専門の転職サイトを使うことをお勧めします。理由はこちら。
セクハラに悩む男性介護士が一人でも少なくなることを願っています。
みなさんの疑問・相談にお応えいたします
男性が受けるセクハラに限らず、介護の仕事をしているとちょっとした疑問や不安が生じることがあると思います。ラブカイゴではそんな疑問・ご相談にお応えいたしますので、以下のお問い合わせフォームからご連絡ください。無料で相談、就労サポートさせて頂きます。
参考文献・URL
セクハラ判例の新展開(男性,同性へのセクハラ)に関する一素描,河合塁,アルテス リベラレス(岩手大学人文社会科学部紀要),2019
看護職の性差別撤廃の必要性 : 男性看護職の現状と男子学生のアンケート結果を参考に,生野繁子,九州看護福祉大学紀要,1999
(労働者向けハラスメント対策パンフレット)職場でつらい思いしていませんか?,厚生労働省
(労働者向けパンフレット)悩んでいませんか?職場でのセクシュアルハラスメント,厚生労働省