介護士はストレスの多い仕事と言われています。利用者の健康・生活のために、多少のストレスを抱えながら仕事に取り組んでいる人は多いでしょう。しかしそのストレスが上司や先輩からの理不尽な圧力によるものだったら我慢できるでしょうか?
もちろん上司や先輩は指導のためにある程度厳しいことを言うかもしれません。しかし適正な範囲を超えてあなたがストレスを与えられているとしたら、それはパワハラに該当する可能性があります。
私は介護事業所の管理職という立場上、従業員を守るためにパワハラ予防に取り組んでいます。従業員は大切な宝であり、パワハラは許されるものではありません。
この記事では介護職員がパワハラから自分の身を守る4つの対策について解説します。上司や先輩からのストレスで悩んでいる方に参考にしてもらえたら嬉しいです。
1.どんなことをされたのか記録する
2.はっきりと意思を伝える
3.職場の人・窓口に相談する
4.外部の相談窓口に相談する
そもそもパワハラとは
パワハラは「パワーラスメント」の略です。「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為」と定義されています。
簡単に言うと、上司や先輩などという立場を利用して、職場内でいじめのように相手を傷つける行為です。パワハラには6つの種類があります。具体例を確認していきましょう。
6種類のパワハラと具体例
1.身体的な攻撃
- 物を投げつけられ、身体に当たった
- 蹴られたり、殴られたりした
2.精神的な攻撃
- 他の介護職員の前で、ささいなミスを大きな声で叱責された
- 必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱られた
- 大きな音でテーブルを叩き、にらみつけられた
3.人間関係からの切り離し
- 他の介護職員と話したり協力し合うことを理由なく禁じられた
- 先輩・上司に挨拶しても、無視され、挨拶してくれない
- 根拠のない悪い噂を流され、会話してくれない
4.過大な要求
- 終業間際なのに、時間のかかる仕事を毎回押し付けられる
- 一人ではできない量の仕事を押し付けられる
- 達成不可能な課題を常に与えられる
5.過小な要求
- 専門職なのに、倉庫やトイレなどの掃除を必要以上に強要される
- 他の部署に異動させられ、仕事を何も与えられない
6.個の侵害
- 個人所有のスマホを勝手にのぞかれる
- 不在時に、机の中を勝手に物色される
- 休みの理由を根ほり葉ほりしつこく聞かれる
パワハラは心身の不調を引き起こす
パワハラが継続されると職員は過度なストレス受け、心身の不調を引き起こしてしまいます。仕事に対するモチベーションやケアの質が低下し、離職の原因ともなります。
あなたがどれくらいストレスを抱えているのか、簡単に確認できる質問があります。一例を挙げますので「はい」か「いいえ」で答えて下さい。
- 非常にたくさんの仕事をしなければならない
- からだを大変よく使う仕事だ
- 自分で仕事の順番・やり方を決めることができない
- ひどく疲れている
- 頭が重かったり頭痛がする
- 腰が痛い
- よく眠れない
これらの質問に「はい」の答えが多かった人はストレスが高い状態と言えます。
※心身に不調のある場合は医療機関を受診し、医師の指示に従ってください
4つのパワハラ対策
もし自分がパワハラを受けていると感じたら、自分の身を守ることが最も重要です。決して我慢しないでください。社会的にも法律的にもあなたは守られるべき立場です。職場でのあらゆるハラスメントは許されません。これから4つのパワハラ対策について説明しますので、1つずつ実行してください。
1.どんなことをされたのか記録する
ハラスメントと思われる行為があったら、その状況を記録に残しておきましょう。後々の事実確認で有効となります。ハラスメントがあった日時、どこで、誰から、なぜ、どんなことをされたのか、詳細を記録します。あらかじめボイスレコーダーを準備し、音声録音する方法もあります。
2.はっきりと意思を伝える
パワハラを受け流しているだけでは、状況は改善しません。相手に対して「やめてください」「私はイヤです」と、あなたの意思を伝えましょう。黙って我慢していると事態をさらに悪化させてしまうことがあります。
3.職場の人・窓口に相談する
一人だけで悩まず、上司や同僚に相談しましょう。周りの協力を得ることで、ハラスメントをしている本人が、自らの行為に気づいて改善される場合があります。事業所内で相談する人がいない場合は、施設長やハラスメントの相談窓口、人事部などに相談してみましょう。
4.外部の相談窓口に相談する
職場内で相談する窓口がない場合や、職場内で解決できない場合は外部の窓口に相談しましょう。下記の相談先はいずれも無料で相談できます。
まとめ:介護職員がパワハラから身を守る方法
介護職員がパワハラから自分の身を守るための4つの対策について解説しました。
決して我慢しないで、4つの対策を実行してください。もう怖い思いをしなくて大丈夫です。対策を1つずつ行う中で、相手がパワハラ行為に気づき反省し、態度を改めてくれるようになることを願っています。最終的には職場内で良い関係性を築いて、長く介護職員として働いてくれたら嬉しいです。
それでもパワハラが改善しない場合
4つの対策を行ってもパワハラが改善しない場合、職場を変えることを視野に入れた方が良いかもしれません。職場を変える(転職する)なら介護専門の転職サイトを使うことをお勧めします。理由はこちら。
どこにも誰にも相談することができない場合
パワハラを受けている人は非常に神経がすり減っていると思います。そのような時は相談するという行為だけでも大変な苦労をします。もし、どこにも誰にも相談できないという方はラブカイゴまでお問い合わせ頂ければ幸いです。無料で相談、就労サポートさせて頂きます。
パワハラに悩む介護職員が一人でも少なくなることを願っています。
参考文献
介護老人福祉施設に勤務する介護職員のいじめ,ハラスメントとストレス反応,谷口敏代 他い,産業衛生学雑誌,2012
職場パワーハラスメントの認識性・体験尺度の新規開発と信頼性・妥当性の検討,仁位百雲子 他,九州大学学術情報リポジトリ,2018
労働者における職場のいじめの測定方法の開発とその実態、健康影響および関係要因に関する調査研究,川上憲人 他,産業医学振興財団,2009
(労働者向けハラスメント対策パンフレット)職場でつらい思いしていませんか?,厚生労働省
職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル―より効果的な職場環境等の改善対策のためにー,下光輝一 他,厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究,2005