自分の働く施設がブラックかホワイトか判断することは簡単ではありません。どんな職場にも良い面と悪い面があり、多少のことでブラックだと声を上げるのに抵抗のある人もいるでしょう。
ですが劣悪な職場環境に長くいると、介護職員は自分らしさを失いイキイキと働くことができなくなります。それは大変不幸なことです。
私も過去には安月給・長時間労働のブラック施設で働いていました。
でも「ここに長くいてはいけない」と思いきって別の施設に転職した結果、プライベートの時間を十分確保できるようになりました。また自分らしく介護の仕事に向き合えるようになり、ホワイトな環境の大切さを実感しています。
自分の施設がブラックかどうか判断することは非常に重要です。そこでこの記事では3つの視点からブラック施設の見分け方について解説したいと思います。
- ハラスメントやいじめが横行していないか
- 労働条件が極端に悪くないか
- 介護環境が極端に悪くないか
この記事を読んで自分の施設がブラックかどうか、判断する際の参考にしてもらえたら嬉しいです。
職場がブラックかどうかは慎重な判断が必要
そもそもブラック施設とはどのような施設でしょうか。この記事ではブラック企業の介護施設版と考えて解説したいと思います。
京都新卒応援ハローワークによればブラック企業の特徴として次の4点があります。
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金不払残業や、いじめ・嫌がらせ等のパワーハラスメントが横行する等、企業全体のコンプライアンス意識が低い
- 採用時に合意した以上のシフトを入れる
- 退職を申し出た際に「ノルマ」や「罰金」を理由に辞めさせない
このように劣悪な環境で働かせる施設はブラック施設といえるでしょう。
ただ、ブラック施設に決まった定義はありません。中には職場に対してなんでもかんでもブラックだと叩く職員もいます。安易にブラックだと決めつけるのではなく、慎重な判断が必要でしょう。
見分け方1:ハラスメントが横行していないか
ハラスメントやいじめが横行している職場は、間違いなくブラック施設だといえるでしょう。ハラスメントやいじめは被害者個人だけではなく、それを見ている周囲の人にまで悪影響をおよぼします。
ハラスメントにはいくつかの種類があり、介護施設で見られる具体例には以下のようなものがあげられます。
ハラスメントの種類 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
パワハラ | 上司や先輩などの立場を利用し職場内で相手を傷つける行為 | 他の介護職員の前でささいなミスを大きな声で叱責された |
セクハラ | 自分の意に反する性的な言動が行われ、拒否すると不当な扱いを受ける状態 | 会話中に性的な冗談やからかいをしてくる |
逆セク ハラ | 男性が女性から受けるセクハラ | 「男なんだから」と力仕事を押し付けられる |
SOGIハラ(ソギハラ) | LGBTなどのセクシャルマイノリティの人たちへの差別 | 本人の許可なくLGBTであることを周囲に言いふらす |
マタハラ | 女性労働者が妊娠したり育児休暇を希望することに対する嫌がらせ | 妊娠した女性職員に「なんで忙しい時期に妊娠するんだ」と冗談を言う |
カスハラ | 利用者や家族から受けるハラスメント | 気に入らない職員に対し「おまえじゃダメだ」「役立たず」「帰れ」と人格などすべてを否定するような辛辣な言葉を浴びせる |
いじめとは、繰り返し一定の期間続く嫌がらせなどの行為です。たとえば「職場で気が合わない人から悪質ないたずらを3か月受け続けている」という状況は、いじめといえます。
ハラスメントは1度でも起これば認定されるため、厳密にはいじめと区別されます。
あなたの職場にはハラスメントやいじめはありますか?ハラスメントやいじめの具体例についてはこちらの記事に詳しく書いてありますので、よろしければ参考にしてください。
見分け方2:労働条件が極端に悪くないか
労働条件が極端に悪い職場もブラック施設といえます。たとえば給料が安すぎる、休憩がとれないなどの職場では働くモチベーションが保てないでしょう。
残業しているのに残業代が出ない、仕事中のケガなのに労災がおりないなど、労働法に違反している施設は論外です。そのような職場からはすぐに転職した方がよいでしょう。
まずは介護職員の平均的な労働条件を知ることが大切です。次の表を確認してみましょう。
条件 | 平均値 |
---|---|
給料 | 年収363万円 |
労働時間(一日あたり) | 8時間 |
休憩時間(一日あたり) | 58分(日勤の場合) |
残業時間(ひと月あたり) | 4時間 |
休日(ひと月あたり) | 10日間 |
昇給 | 年々増加傾向 |
介護福祉士の資格を持っている場合、給料は高くなり平均年収は400万円近くになります。
あなたの職場の労働条件と比べてどうでしょうか。これらの平均値と比べ極端に悪い労働条件で働かされているなら、あなたのモチベーションを削るブラックな施設の可能性があります。
介護職員の平均的な労働条件については以下の記事に詳細がありますので、よろしければ参考にしてください。
見分け方3:介護環境が極端に悪くないか
介護環境が極端に悪い施設はブラックといえます。たとえば以下のような場合があります。
- 虐待をしている職員がいる
- 不適切ケアが日常的に行われている
- 激務で職員への身体負担が大きすぎる
虐待はブラックどころか犯罪です。平成18年に高齢者虐待防止法、平成24年に障害者虐待防止等に関する法律が施行され、虐待に対する国民の意識は確実に高まっています。
不適切ケアは「虐待とまではいえないけど、利用者の尊厳やプライバシーを損なう恐れのある職員による言動」のことです。たとえば『利用者に友達感覚で接したり、子供扱いする』などが該当します。
不適切ケアは、続くと虐待に発展してしまう可能性があり、虐待の芽とも呼ばれます。早期発見して対処することが重要になってきます。
また重度の介助を多数こなすような激務となると身体への負担が心配であり、そのような業務を強制する環境はブラックだといえます。
自分らしさを失ってしまう介護環境
ブラックとまではいえなくても、自分らしさを失ってしまうような介護環境にも要注意です。たとえば以下のような状況があげられます。
- ヒヤリハット報告書が反省文あつかいにされている
- 利用者の介護について話し合う機会がない
- 業務改善について話し合う機会がない
- 働きがいを感じられない
介護職員は上司のいうとおりに動くロボットではありません。介護は人と人との繋がりです。職員みんながケアについて考え、チームとして関わることが重要です。
反省文を書くよう一方的に命令されたり、話し合いの機会がもたれない状況では職員の働きがいはなくなってしまうでしょう。
介護環境の重要性についてはこちらの記事に詳細が書いてありますのでよろしければ参考にしてください。
まとめ:3つの視点からブラック施設か判断しよう
この記事ではブラック施設の見分け方について3つの視点を解説しました。
- ハラスメントやいじめが横行している
- 労働条件が極端に悪い
- 介護環境が極端に悪い
このような職場はブラック施設だといえるでしょう。自分の職場がブラックかどうか判断する際に参考にしてもらえたら嬉しいです。
自分の職場がブラック施設だったら転職も考えて
もし自分の職場がブラック施設だと判断したら、職場を変えることも検討してみてください。今、介護職員は引く手あまたであり、あなたに合う施設が見つかる可能性が高いです。転職を検討するなら介護専門の転職サイトを使うことをお勧めします(※完全無料です)。理由はこちらの記事をご参照ください。
みなさんがホワイトな環境で、自分らしくイキイキと介護の仕事ができることを心から願っています。
参考文献・URL
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル,株式会社 三菱総合研究所,2022
SOGIハラスメントとは 具体例や遭遇したときの対応 – 記事 | NHK ハートネット
賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果,厚生労働省老健局老人保健課
大阪府内新設介護老人福祉施設における筋骨格系障害の実態-施設責任者の把握状況とアンケート調査による職員の訴え-,冨岡公子 他,産業衛生学雑誌,2007
_ユニットケアを導入している特別養護老人ホームに勤務する介護職員の身体活動量、エネルギー消費量および作業強度,涌井忠昭 他,産衛誌,2002